和室棟の玄関前にウメの木があり、今、白い花を咲かせています。まだ寒い日もありますが、「春遠からじ」というメッセージを感じます。
さて、ウメは昔から香りのよい花を咲かせる植物として愛されてきました。ネットで調べてみると「杏仁豆腐(あるいはアーモンド)に似た『ベンズアルデヒド』が主成分」とありました。ベンズアルデヒドとは? 化学を選択している高校生の皆さんなら化学式が書けるのではないでしょうか。芳香族なんて粋な名称は誰が付けたのでしょうね。
【問題】香りが強い花を咲かせる植物を挙げてみましょう。そして、その香りは、その植物の生存にどのように関係しているか考えてみましょう。
今回は花の香りについて考えてみましょう。花に香りがある、つまり植物が香りの強い物質を合成するのは、花に訪れる動物(ここでは花に訪れる鳥類などを含めていったん動物と表現しておきますが、日本では主に昆虫たちが該当します)を呼ぶため-それは容易に想像できます。しかし、すべての植物が動物の嗅覚に訴え、花に誘う訳ではありません。嗅覚とよく対比されるのが視覚です。確かに多彩な花の色、形、そしてまとまって咲く全体の姿といった刺激は動物の視覚に強く訴え、花への訪れを誘うことでしょう。では嗅覚に訴える刺激と視覚に訴える刺激はどのように異なるでしょうか。
ここでは刺激の届く距離に注目してみましょう。刺激の強さを別にすれば、香り、つまり空気中に放たれた化学物質の刺激は、光の刺激よりも遠い距離まで届きます。となると、次のような解釈ができそうです。まだ寒い季節に数少ない昆虫を何とか花へ誘うには、花が咲いているという情報をできるだけ遠くへ届ける方が有利です。そうなると花の数は少なくして、自分の持てるエネルギーを香りに関する物質の合成に投資するウメのような植物の戦略は合理的と言えます。
ついでに言うと、春たけなわの時期、暖かくなると昆虫の数は増え、活動も活発になります。(これ以降、擬人的な表現をお許しください)限られた資源である昆虫を誘うため、植物たちは競って花という「広告」を掲げます。つまり多くの花が咲き乱れる春は、植物にとって香りよりも「目立ってなんぼ」の季節なのかもしれません。
【キーワード】ベンズアルデヒド(芳香族化合物) 嗅覚と視覚












